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新型コロナウイルスに関する事業者・職場のQ&A(令和2年2月1日時点版)プラスα 簡易版

令和2年2月1日の時点で、厚生労働省などによる見解が示されている事項を中心に、過去に発生した感染症への対応を参考にしつつ、事業者・職場向けのQ&Aをまとめてみました。

㊟ 今後、感染被害の状況や、新型コロナウイルスの研究の結果などにより、見解や対応が変更・明確化される可能性があります。

<一般論>

Q1 新型コロナウイルス感染症が「指定感染症」に定められたということですが、指定感染症とはなんですか?

A1 指定感染症とは、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、「感染症法」)において、「感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの」と定義されています(感染症法第6条) 。

   新型コロナウイルス感染症について適用される感染症法の規定には、「健康診断受診の勧告・実施」、「就業制限」、「入院の勧告・措置」などがあります。

   具体的には、新型インフルエンザ等感染症、中東呼吸器症候群(MERS)などと同等の取り扱いとなります。

Q2 新型コロナウイルス感染症は、「検疫感染症」にも定められたということですが、検疫感染症とはなんですか?

A2 検疫感染症とは、検疫法において、「国内に常在しない感染症のうちその病原体が国内に侵入することを防止するためその病原体の有無に関する検査が必要なものとして政令で定めるもの」と定義されています(検疫法第2条)。

検疫法は、主に、いわゆる水際対策を担うものです。

新型コロナウイルス感染症については、この法律の規定による質問、診察・検査、消毒等の規定が適用されます。

<職場での対策等>

Q3 職場で取り組むべき新型コロナウイルス対策にはどのようなことがありますか。

A3 厚生労働省の見解によると、令和2年2月1日の時点では、一般的な衛生対策が効果的とされています。

具体的には、咳エチケット(マスクの着用など)や手洗いなどを行うことが重要です。

    なお、先例にならうと、特に、基礎疾患を有する労働者や妊婦等である労働者については、重症化する可能性が高いので一層の注意が必要といえます。

Q4 労働者が業務上、新型コロナウイルス感染症に罹患した場合、事業者は、安全配慮義務違反に問われるのでしょうか。

A4 令和2年2月1日の時点で、厚生労働省からの明確な見解は公表されていませんが、先例にならうと、労働契約法第5条の適用をどのように考えるかがポイントとなります。

労働契約法第5条は、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」ものとしています。

この条にいう使用者の安全配慮義務の具体的内容は、労働者の労務の具体的状況等により異なるものであるので、一概には言えませんが、労働者が就業に際し新型コロナウイルス感染症に罹患しないよう、必要な感染防止策(Q3)を講じる必要があるでしょう。

<就業制限・休業・休暇>

Q5 新型コロナウイルス感染症に感染したことが確認された労働者について、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業禁止の措置を講ずる必要はありますか。

Q5 厚生労働省の見解によると、令和2年2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められたことにより、労働者が新型コロナウイルスに感染していることが確認された場合は、感染症法に基づき、就業制限や入院の勧告等を行うことができることとなりますので、それに従う必要があります。

しかし、労働安全衛生法第68条に基づく病者の就業制限の措置については対象としないということです。

Q6 では、労働者が新型コロナウイルス感染症に感染していることが確認された場合に、どのような対応をしたらよいでしょうか。

A6 令和2年2月1日の時点で、厚生労働省からの明確な見解は公表されていませんが、先例にならうと、労働者の感染が確認された場合、保健所の要請等に従うことが重要となります。

職場で大規模な集団感染が疑われるケースについては、事業者は、保健所と相談の上、必要に応じ、感染拡大防止のため、事業運営において感染機会を減らすための防止策等に協力する必要があるでしょう。

Q7 新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させる場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

A7 令和2年2月1日の時点で、厚生労働省からの明確な見解は公表されていませんが、先例にならうと、感染拡大防止の観点からは、感染又は感染の疑いがある場合には、保健所の要請等に従い感染拡大防止に努めることが重要といえます。

その際、欠勤中の賃金の取扱いについては、労使で十分に話し合い、労働者が安心して休暇を取得できる体制を整えることが求められます。

Q8 新型コロナウイルス感染症に関連して労働者を休業させる場合、賃金の支払の必要性の有無等については、どのように考えればよいでしょうか?

A8 令和2年2月1日の時点で、厚生労働省からの明確な見解は公表されていませんが、先例にならうと、個別事案ごとに諸事情を総合的に勘案すべきものといえます。

法律上、労働基準法第26条に定める休業手当を支払う必要性の有無については、一般的には以下のように考えられます。

⑴ 労働者が新型コロナウイルス感染症に感染したため休業させる場合

医師等の指導により感染した労働者が休業する場合は、一般的には、休業手当を支払う必要はありません。

医師の指導等の範囲を超えて(外出自粛期間経過後などに)休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があると考えられます。

⑵ 労働者に発熱などの症状があるため休業させる場合

感染しているかどうか分からない時点で、発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同様に取り扱えば足りるものと考えられます。

一方、例えば熱が37度以上あることなど一定の症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとる場合のように、使用者の自主的な判断で休業させる場合は、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があると考えられます。

⑶ 感染者と近くで仕事をしていた労働者や同居する家族が感染した労働者(濃厚接触者)を休業させる場合

感染しているか否かが明確でない濃厚接触者である労働者について、医師等の指導や保健所の要請等により休業させる場合は、⑴と同様、休業手当を支払う必要はないと考えられます。

そのような労働者について、使用者の自主的判断で休業させる場合には、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当たり、休業手当を支払う必要があると考えられます。

㊟ なお、⑴から⑶において休業手当を支払う必要がないとされる場合においても、在宅勤務などの方法により労働者を業務に従事させることが可能な場合において、これを十分検討する等休業の回避について通常使用者として行うべき最善の努力を尽くしていないと認められた場合には、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当する場合があり、休業手当の支払が必要となる可能性があります。

Q9 新型コロナウイルス感染症に感染している疑いのある労働者について、一律に年次有給休暇を取得したこととする取扱いは、労働基準法上問題はありませんか。病気休暇を取得したこととする場合はどうですか。

A9 厚生労働省の見解によると、年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければならないものですので、使用者が一方的に取得させることはできないとされています。

事業場で任意に設けられた病気休暇により対応する場合は、事業場の就業規則等の規定に照らし適切に取り扱ってください。

<その他>

Q10 新型コロナウイルスの感染の防止や感染者の看護等のために労働者が働く場合、労働基準法第33条第1項の「災害その他避けることができない事由によって、臨時の必要がある場合」に該当するでしょうか。

A10 厚生労働省の見解によると、今回の新型コロナウイルスが指定感染症に定められており、一般に急病への対応は、人命・公益の保護の観点から急務と考えられるので、労働基準法第33条第1項の要件に該当し得るものと考えられるとされています。

ただし、労働基準法第33条第1項に基づく時間外・休日労働はあくまで必要な限度の範囲内に限り認められるものであることに留意が必要です。

<相談窓口> ←追加

Q11 新型コロナウイルス感染症に関する相談窓口はありますか。

A11 厚生労働省が総合的な相談窓口を設置しています。

  ・電話番号 03-3595-2285

(受付時間 9時00分~21時00分(土日・祝日も実施))

最寄りの都道府県・保健所等も電話相談間窓口を設置していますので、混雑時には、そちらを利用するとよいでしょう(次のURL参照)。

 https://www.kantei.go.jp/jp/pages/corona_news.html

また、経済産業省では、中小企業向けに経営上の相談を受ける窓口を設置しています(次のURL参照)。

≫ https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200129007/20200129007.html